車庫証明の使用の本拠の位置における従業員・代表取締役・平取・管理職の扱いの違い

在宅勤務で社有車の保管場所を確保するという問題

新型コロナの影響もあってリモートワークをはじめとした在宅勤務を導入、あるいは導入を検討している企業が増えてきています。公私の区別がつけにくい、勤務評価が難しいといった課題も山積していますが、企業側にとっても事務所経費の削減や営業拠点の集約化といった目に見えるメリットがあるため今後この流れは徐々に浸透していくものとみられています。

現時点ではこの流れは完全内勤の就労形態の分野が中心ですが、車で取引先を訪問するルートセールスや保守点検等の業務においても直行直帰のような原則在宅勤務の勤務形態を模索する企業は増加しつつあります。そのような企業様から「社有車の保管場所をどうするのか」というご相談を受ける機会が増えてきました。

直行直帰を認める際生じる駐車場代の二重負担の問題

社有車を保有する際原則通りに自動車登録すると、営業拠点の近辺(2km以内)に自動車保管場所を確保する必要があります。多くの企業では営業所付近に駐車場を確保して自動車を保有しています。

一方で、直行直帰を広く認めるとなると、対象従業員の自宅付近に新たな駐車場を確保しなければならないという問題点が発生します。ご相談いただく企業様の悩みもまさにこの点です。「駐車場代を2ヶ所分負担せずに済む方法はないか」「高額な商業地の駐車場を削減できないか」というご相談です。

使用の本拠の位置の申請が必要な理由

車庫証明がなぜ必要なのかという制度趣旨に立ち返って考えてみる必要があります。

車庫証明は自動車の保有にあたって保管場所が確保されていることを警察署が確認をして(軽自動車の場合届け出)、違法駐車や迷惑駐車による被害を抑えるために存在している制度です。そのため、個人であれば自宅等の生活拠点、法人であれば営業所等の事業拠点近くに自動車保管場所を確保しなければなりません。

法人の場合自動車を保有する目的は事業遂行のためですから、法人の事業拠点以外の場所を使用の本拠の位置とするためには自ずと「事業との関連性」という要件が必要となってきます。

代表取締役の場合、自宅が使用の本拠の位置として認められやすい

代表取締役は勤務時間や勤務形態を含めて自己の裁量が大きく、仕事とプライベートの線引きが難しい方が多いこともあって、会社名義の自動車であっても自宅を使用の本拠の位置にすることが広く認められています。中小零細企業の場合、節税対策などで経営者が会社名義の自動車を使用することが一般的という事情もあります。

商業登記簿謄本などで代表取締役であることと代取の自宅所在地の所在証明をすればほとんどの警察署で問題なく車庫証明の申請が受理されるはずです(”はずです”というのは、警察署によって取り扱いが大きく異なる可能性があるからです)。

代表権のない平取締役の場合

代表権のない取締役の場合も代表取締役同様自宅が使用の本拠の位置として認められる可能性が高いでしょう。しかし、代表取締役に比べると自宅を使用の本拠の位置とする説明を求められたり、取引先からの郵便物などで自宅と事業との関連性をただされることも考えられます。というのは、自宅を使用の本拠の位置とする代表取締役の多くが個人事業とさほど変わらない規模の零細企業の経営者だからです。

非常勤の取締役や監査役であったり社外取締役の場合、自宅を業務拠点として説明する理由に乏しく、警察署が使用の本拠の位置として認める可能性は低いと考えられます。

管理職以下の従業員は難しいケースが多い

管理職以下の従業員の場合、自宅を使用の本拠の位置として認められるケースは限られています。単に通勤で自動車を使用するだけであれば認められません。自宅が業務拠点とは言えないからです。自宅が業務拠点であることの説明を出来るだけの理由が必要になります。

以下、認められたケースをいくつかご紹介します。

  1. 電気工事会社の従業員で実質自宅が営業拠点になっていた。
    • 自宅から現場に直接出勤し、会社に立ち寄るのは資材の補充や工事内容の確認など限られた時のみであった。
  2. 事務用機器の販売店でメンテナンスを担当している従業員で直行直帰をしていた。
    • 1の事例同様会社に立ち寄る機会の方が少なく、会社の最寄営業所が大阪府堺市であった。
  3. 保険代理店の歩合制外交員
    • 個人事業主と同視できる勤務形態であった。

共通している点は、従業員といっても従業員の個人宅が就労拠点といえる勤務形態であることや、出社しない理由に関しても警察署の担当者がすんなり納得できる明確な理由が存在しています。いずれのケースも会社側に従業員の業務内容の説明資料等の提出を求められました。取引先から従業員宅宛の郵便物等は説明資料として認められませんでした。

従業員の自宅を使用の本拠の位置として認めるかどうかは各警察署の裁量によりますので、ある警察署では認められても他の警察署では認められないということが往々にしてあります。

代表取締役や平取締役のケースに比べると一般従業員の自宅を使用の本拠の位置とすることは相当ハードルが高いといえます。

代表取締役の証明により認められたケース

全ての警察署で認められるかどうかは分かりませんが、代表取締役(登記されている支店にあっては支店長や支配人)が従業員の自宅を営業拠点であることを証明する書面を提出することで、自宅が使用の本拠の位置として認められたケースもあります。

証明する書面の内容は、

  1. 従業員の在職証明
  2. その従業員の職務内容
  3. その職務を自宅で行うこと
  4. 自宅に社有車を置く必要性
  5. その自動車の管理責任

なぜ従業員の自宅が業務拠点になるのか、自動車を従業員宅に常備しておく必要性があるのか、その従業員が自動車の管理に責任を負えるのかという点を代表取締役が証明することで従業員の自宅を使用の本拠の位置として車庫証明が発行されました。現時点では例外的な事例です。

兵庫県警の担当者によると、法人名義の車両であってもリモートワークを始めとした働き方の多様化に対応していく用意はあるとのことでしたので、今後より柔軟な対応に変わっていく可能性もあります。

従業員を使用者として登録することを検討した方が手っ取り早い

以上、ご説明した通り従業員の自宅を使用の本拠の位置とすることは非常に難しいといえます。警察署によっては一律に認めていないところもあるかもしれません。では従業員個人宅に社有車を配備する方法がないのかというと、そうではありません。

車両の所有者は法人、使用者を従業員個人として自動車登録を行います。

こうすることによって使用者である従業員自身を申請者として車庫証明を申請することが出来ます。「申請者たる従業員の住所=使用の本拠の位置」となり、従業員が個人用の自動車で車庫証明を申請する時と全く同じ状態になります。

しかしこの方法にデメリットがないわけではありません。

車両を使用する従業員がかわるたびに自動車保管場所の変更届以外に陸運局で車両の使用者の変更もしなければならなくなります。この手間が許容範囲内であれば自動車の使用者を従業員として登録することを検討してみることをおすすめします。